2021.11.25
戦後における唐筆の代名詞ともいうべき「上海工芸」は、実は中国ではあまり知られてない。
「上海工芸(藝)」は「上海市工艺品进出口有限公司」という、工芸品を海外へ輸出する国営商社であった。宣紙の「紅星牌」なども、複数の宣紙工場の品を、上海工芸が品質管理をして輸出していたブランドである。また「鐵齋翁書画寶墨」などの上海墨廠の製品も、上海工芸が一手に輸出を管理していたのである。
1980年初頭の改革開放経済によって、国有化された企業が再び民営化されるまで、中国国内では「北京製筆廠」や「天津製筆廠」、「蘇州製筆廠」「浙江湖筆」あるいは「上海筆店」などの、国営企業の筆が流通していた。
上海工芸は商社であるが、1956年に善・鎮に出資して、含山湖筆廠を創建している。
この含山湖筆廠では”火炬牌”または”双喜牌”の筆を生産しており、大半は”上海工芸”の商標で海外へ輸出されたと考えられる。ちなみにこの”含山湖筆廠”は現在も操業しており、”双羊牌”などの商標で、筆都善・鎮を代表するメーカーである。