2021.11.25
棒状の墨は、墨匠が墨の材料を転がし、長細い円柱状にまとめただけの墨である。
稀に表面に磨きをかけて艶を出しているものある。
棒状の墨は、清末から民国時代までに安価な筆記用の墨として大量生産されたものであるようだ。
日本の正倉院御物などで見られる唐代の墨は楕円形などのに押し潰したような形をしている。
このような墨も、型に入れずに成形し中央のみ型押しをし作られたと考えられる。
棒状の墨は型に入れて成形までしていないので、圧力が足らずに弱いのではないかとも考えられるが、
実際は墨の固さは材料と製法で決まるという。
型で圧縮していなくても、乾燥すれば完成すれば同じ固さや密度になるそう。
材料の配合は墨匠の長年の経験や季節や湿度、温度などによって変わるようで
大雑把なところは記録しているが、具体的な量などはとても微妙で書ききれない。頭の中にしかないという事だそうだ。
中国の墨では二十数種類にも及ぶという、漢方生薬の配合があったそうだ。
昔の中国墨は携行薬として作られたものが祖だというが、最近ではあまり香りが良いものや漢方が入っているであろうものはなかなか見られない。
古墨を求めたいのも独自の失われた漢方の配合技術による、発色や保管の良さが現在ではないからであろう。
後日、墨は元々薬や化粧品のような実用品であった事を記載したい。